Avidでは、32ビットQuickTimeコンポーネントに対応しなくなったmacOS Catalina以降、新たなビデオ・コンポーネントの元でのインポートおよびエクスポート機能の向上に努めており、Pro Tools 2021.6にもその幾つかの成果が表れています。また、その進化の過程にあたり、改善点とその操作方法を説明した、詳細なドキュメントとデモンストレーション ビデオを作成しました。また、以前までのファイル機能以上のものを、将来的にPro ToolsとMedia Composerの両方にインプリメントできるよう、継続的に改良に取り組んでもいます。
Pro Tools 2021.6では、バウンス ミックス ウィンドウに、次の重要な機能が追加されました。Pro Toolsファイルメニューから、もしくはショートカットCommand – Option – B(macOS)またはControl – Alt – B(Windows)から利用できます。
ソース・ビデオと同じコーデックでのエクスポート機能
バウンス ミックス ウィンドウでは、ソース・ビデオをDNxHD/HRやApple ProRes MOVファイルにエクスポートするのと同様に、これらのコーデックがMXFラッピングされたバージョンを、そのソースを維持したまま、より素早くMOVファイルにエクスポートできるようになりました。将来的には、他のコーデックに関しても、同じソースを保ったままの エクスポートが可能となる事を目標としています
簡単に言うと、「ソースと同じ」バウンス(エクスポート)と言うのは、ビデオ・コーデックのトランスコードを行わず、使用しているビデオのフレームが、Pro Tools上で映像のカット編が行われていても、同じコーデックを維持したまま直接新しいファイルにコピーされ、バウンスされたオーディオ・ステムと再結合されることを意味します。これにはいくつかの利点があります。1つはビデオ・コーデック変換が行われないため、処理に必要な時間が断然短いことです。もう1つは、オーディオ部門がビデオコンテンツに変更を加えないため、処理する前と全く同じクオリティおよびフォーマットであることです。この機能を用いると、オーディオのみに処理が加えられ、映像は元の品質のものに、そのまま戻すことができるのです。
H.265 (HEVC)
Pro Tools | Ultimateでは、H.265ビデオをインポート、再生、エクスポートできるようになりました。H.265はコーデック全体の効率に利点があり、iPhoneなど、多くのデバイス間で採用され、高い互換性を実現しています。それらのH.265ファイルをPro Toolsに直接インポートできるようになったのです。エクスポートは、H.264のように、可変もしくは固定ビットレート設定で実行できます。エンコードスピードに対するクオリティとビットレートの精度のバランスをとる、追加のエンコード・クオリティ・コントロールも用意されています。
AAC エクスポート
以前までの、PCMオーディオのMOVエクスポート対応に加え、AACオーディオもMOVファイルにエクスポート可能となりました。これにより、MOVエクスポート時に、オーディオを、モノ、ステレオ、5.1、7.1フォーマットで、CBR(固定ビットレート)もしくはVBR(可変ビットレート)で圧縮できます。
AACエクスポートは、44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHzサンプルレートとオーディオのシングル・ステムに対応し、Pro Tools | UltimateおよびPro Tools ソフトウェア(モノおよびステレオのみ)で利用できます。
このAACエクスポート機能拡張により、ビデオファイルで採用されている、より新しい圧縮されたオーディオ・フォーマットに対応となり、最も一般的なビデオ・ストリーミング・プラットフォームと直接互換性がある圧縮オーディオおよびビデオのエクスポートが可能となりました。
QuickTime チャンネル・フォーマットの拡張
MOVファイルタイプで対応する全てのチャンネル幅に対応し、バウンスミックスすることが可能となりました。MOVファイルへのエクスポート時に、もうチャンネル幅の制限はありません。
最後に
これまでのQuickTime 32ビット・コンポーネントからの移行の過程の中で、利用できなくなっていた幾つかの機能に対応でき、さらに新しい機能も追加されたことは、注目すべきことでしょう。放送業界での一般的なファイル・コンテナであるMXF OP1aからのオーディオインポート、Apple Losslessからセッション・フォーマットへのインポートと変換、最新のリリースでH.265がMOVに対応等がそれにあたります。
「同じソース」でのエクスポートで対応するコーデックをさらに広げる必要があるということを除いては、確実に進歩を遂げており、それまでの「バウンスQuickTime機能」時の性能と利用可能なインポート形式は既に超えていると言っても良いでしょう。