Pro Tools 2022.4がリリースされました。今回のリリースでは、新たな製品ラインナップの登場(Pro Tools Artist、Pro Tools Studio、Pro Tools Flex)に加え、以下のような数多くの新機能や強化が含まれています:
●カスタム・キーボード・ショートカット
- Pro Tools上にある、ほぼすべてのコマンドを、キーボード・ショートカットとしてカスタムにアサインすることが可能となりました。
●Pro Tools Search(検索機能強化)
- Pro Toolsの検索機能が、コマンド名やオブジェクト名で実行することが可能となりました。
●ビデオ・カラー・スペース対応強化
- SDR およびHDR ビデオ・メディアに対するカラー・スペースに対応し、色精度の再現性を高めました。
●Dolby Atmos 関連強化
- 静的なDolby Atmos® グループ
- Dolby Atmos Plug-in オートメーションを、パン・オートメーションにデュプリケイト可能
●その他の新機能および強化
- Pro Toolsダッシュボード内のデザインが一新され、新しいユーザーが必要なPro Tools情報(英語)に素早くアクセスできるようになりました。
- WASAPI対応により、内蔵およびサードパーティ製のWindowsオーディオ機器の対応範囲が拡充されました。
- クリップ・リスト・メニューから編集インサーションに対してクリップをスポット移動させることが可能となりました。
- Auxインプット・トラック作成時、ソロ・セーフ設定が初期値となりました。
- 録音/インプット・モードがオフとなった場合、自動的にDSPモードが無効化されるプリファレンスが加わりました(Pro Tools HDXハイブリッドエンジンおよびPro Tools | Carbon使用時のみ有効)
- EUCONアサイナブル・ノブ対応(要4以降)
では、それぞれを詳しく見ていきましょう。
カスタム・キーボード・ショートカット
キーボード・ショートカットは、Pro Toolsで作業時のスピードアップに役立つツールです。Pro Tools 2022.4では、カスタム・キーボード・ショートカットに対応し、Pro Tools上のほとんどすべてのコマンド並びにキーボード・ショートカットを、お好みのキー・コンビネーションへと自在に変更/アサインすることが可能となりました。新しいキーボード・ショートカット・ウインドウには、既存のコマンドやショートカットがリスト化されています。必要となるコマンドを名前、キー・アサインまたはタグ等で検索し、そのキー・アサインメントを編集することが可能です。検索時には、複数のフィルターを組み合わせて使い、目的のコマンドを的確に絞り込むこともできます。用意されているフィルターには、キー・コンビネーション、コマンド名、コンフリクト(衝突)、カスタム・アサインおよびタグ等があります。
サーチ・フィルター
タグは初期設定では、カテゴリー(編集やオートメーション)、タイプ(クリップやファイル)、ロケーション(編集メニューやワークスペース)等によってコマンドを定義しています。必要に応じて、カスタムでタグを作成し、任意のコマンドにアサインすることもできます。
フィルター・サーチ時にタグを選択
初期設定では、コマンド・リストは、キーボード・ショートカットにアサイン可能なすべてのPro Toolsコマンドを表示しています。1つの検索ワードを入れることで、それに関連した複数のコマンドが表示されますので、フィルターを使って、さらにその検索結果を絞り込んでいきます。コマンド属性は、コラム内にまとめられますが、コマンド自体は行ごとにリスト化されます。
キーボード・ショートカット・アサインは、まだショートカットがアサインされていないコマンドも含めキーボード・ショートカット・ウインドウ内のすべてのコマンド・リストに対して実行することができます。もし気が変わった場合でも、いつでも設定をリセットし、初期設定時のアサインに戻る事が簡単に行えます。カスタム・アサインを作成時、別のコマンドが既に同じキー・コンビネーションを持っている場合でも、Pro Toolsは、それらをコンフリクト・コラム内で表示してくれますので、それを変更したり、リセットしたりすることで、その衝突を解消することも可能です。
Pro Toolsでは、最も使用するキーボード・ショートカット・アサインを簡単に保管し、リコールする事が可能な、5つのプリセットを設定することができます。また、プラグイン・プリセット時と同様の方法で、さらに多くのプリセットを保存し、インポートすることも可能です。例えば、1つのワークステーションを共有している際に、自身のカスタム・キーボード・ショートカットを使用したい場合や、音楽制作時とポスト作業時で、別々のショートカットを活用したい場合等に活用すると便利です。勿論、他のPro Toolsシステム上で、自分のカスタム・キーボード・ショートカットを使用することも可能となります。
Pro Tools SEARCH(サーチ)
コマンドやオブジェクト(トラックやクリップ等)を、名前やPro Tool上での実行動作で検索することが可能となりました。以下が実行可能です:
- 名前やその機能の実行でコマンドを検索
- 名前や選択によりトラックを検索
- 名前や選択によりクリップを検索
- 名前やリコール動作でメモリー・ロケーションを検索
- 名前や有効または無効化によりトラック・グループを検索
- 名前やその起動によりAudioSuiteプラグインを検索
検索フィールドにタイプすることで、結果がリスト化されます。
Pro Tools Searchを使うには:
●次の動作によりPro Tools Searchフィールドを開きます:
-
- Window (ウインドウ)メニュー> Pro Tools Searchを選択
- Control + Shift + S (Mac) またはStart + Shift + S (Windows)
●リストから必要なコマンドやオブジェクトを選択しクリック(またはリターン・キーを押す)して、コマンドの実行やオブジェクトの選択を行います。
ビデオ・カラー・スペース強化(Pro Tools Studio およびPro Tools Ultimate のみ))
Pro Tools 2022.4では、SDRおよびHDRの両メディア上で、デスクトップ並びにハードウエア・ディスプレイ使用時に、映像表示を最適化する為、数多くのカラー・スペース・オプションに対応しました。これにより、映像編集時に使用しているMedia Composer等のノンリニア編集ソフト上の映像とイメージがマッチした状態で、Pro Tools上でのMA作業が継続可能となりました。ビデオ・トラックでは、ファイルの処理方法と接続されているビデオ機器上でモニターする為のカラー・スペース設定用のメタデータが提供されますので、Pro Toolsは自動的にそれを検知し、新たに搭載されたカラー・スペース・セレクター上で、インポートされたメディアに最適なカラー・スペースを知らせてくれます。
カラー・スペース・セッティングの全リスト。
推奨オプションが黄色くハイライトされます。
Dolby Atmos関連機能強化
2022.4 には、以下のDolby Atmos関連機能強化が図られています:
- 静的なDolby Atmos グループ
- Dolby Atmos Plug-in オートメーションを、パン・オートメーションにデュプリケイト可能
静的なDolby Atmosグループは、オーディオ・ポストプロダクションで標準的に使用される4つのグループ(dialog, music, effects, narration)で構成され、ベッド/オブジェクト・グループ管理ダイアログで加えらます。Pro Tools がベッド/オブジェクト・グループを管理する際、Dolby Atmos Renderer と一致するデフォルトのグループセットが提供可能となりました。
これまでPro Toolsは、Dolby Atmos Music Panner情報を、ADMファイル内に含める事ができませんでした。Pro Tools 2022.4とDolby Atmos Music Panner 1.2を用いることで、Pro Toolsは、プラグイン・オートメーションを、Pro Toolsパン・レーンにコピーすることが可能となりました。これにより、Dolby Atmos Music Pannerでクリエイティブにミックスした結果をADMファイルとしてデリバリーする際、“Duplicate Dolby Atmos Plug-in Automation to Pan Automation”コマンドを使って、そのプラグイン・オートメーションをPro Toolsパン・オートメーションへと複製することができるようになりました。
その他の新機能および強化
- Pro Toolsダッシュボード内のデザインが一新され、新しいユーザーが必要なPro Tools情報(英語)に素早くアクセスできるようになりました。
- WASAPIサポートにより、Windows環境下で、より多くの内蔵およびサードパーティ・オーディオ機器に対応可能となりました。
- クリップ・リスト内のクリップを、編集インサーション上へスポットすることが可能となりました。
- Auxインプット作成時、ソロ・セーフが初期値となりました。これにより、オーディオをAuxインプットにルーティングした際、トラックをソロにしても、Auxインプットが自動でミュートされることはなくなりました。
- 録音/インプット・モードがオフとなった場合、自動的にDSPモードが無効化されるプリファレンスが加わりました(Pro Tools HDXハイブリッドエンジンおよびPro Tools | Carbon使用時のみ有効)。録音時のみでDSPモードをオンにするという使い方を行いたい場合、該当トラック上の録音待機ボタンおよびトラック・インプット・モニターを解除すると、自動的にDSPモードをオフにすることが設定可能となりました。
- EUCONアサイナブル・ノブ・ハイライト表示(要4以降)。初期設定上で、このモードを有効にすると、Pro Tools上で任意のパラメーターにカーソルを合わせたり、クリックしたり、調整したりすると、S6/S4 MTMまたはDock上のアサイナブル・ノブがハイライト表示され、そこから該当するパラメーターをコントロールすることができるようになります。
入手方法
Pro Tools 2022.4は、有効なサブスクリプションまたは永続ライセンスのアップデイト+サポート・プランをお持ちの全Pro Toolsユーザーは、AvidLinkまたは、ご自身のAvid Accountにより入手可能です。Pro Toolsのソフトウエア・アップデイト+サポートプランの更新または最新のバージョンを入手ご希望の場合は、こちらより該当オプションをご確認ください。Pro Toolsをまだお使いでない方は、最新バージョンが30日間お試しいただけるトライアル版をご利用ください。
本リリースの詳細に関しては、Avidアカウント内にある関連ドキュメントもご参照ください。
● What’s New in Pro Tools 日本語ガイド (2022年4月版)
● クイックリファレンスガイドはこちらから (2022年4月版)
Dolby Atmosは、Dolby Laboratoriesの登録商標です。